所得消費曲線とエンゲル曲線




 

所得効果と代替効果の記事では、上級財や下級財はどういう財であるかについて学びました。

しかし、上級財は常に上級財で在り続け、下級財は常に下級財で在り続ける、というわけではありません。状況によって上級財から下級財へ、下級財から上級財へと転じることがあります。

 

そこで、ある時点においてある財がどちらであるかを分析する際、所得消費曲線とエンゲル曲線を用います。さらに、上級財が奢侈品であるか必需品であるかも分析することが出来ます。ここでは、所得消費曲線とエンゲル曲線について論じます。

上級財や下級財についての理解が不安な方は、『所得効果と代替効果①~上級財(正常財)、下級財(劣等財)、ギッフェン財の分析』(別窓)を参照してみてください。

 

 

目次

所得消費曲線

所得消費曲線とは、ある消費者の所得が変化したときの最適消費点の変化の軌跡を表したものです。つまり、予算制約線を上下に動かすことで描かれる最適消費点の軌跡こそが所得消費曲線なのです。なお、縦軸と横軸には消費量を取ります

 

したがって、原点から所得消費曲線上の点が離れるほど、所得が増大していることが分かります。この曲線を用いることで、ある時点における最適消費点において、X軸Y軸に当たる2財が奢侈品か必需品か、あるいは、上級財か下級財かを分析します。

 

所得消費曲線上において上級財・下級財を判別する場合

AA’は所得が変化したときのX財、Y財の最適消費点の軌跡、すなわち、所得消費曲線を表しており、B,Cはその曲線上にある任意の点であるとします。まず、B点の界隈について確認しましょう。B点の前後で曲線は右上に進むように描かれていますよね。

このことから、B点において、X財Y財は何れも上級財であることがわかります。何故なら、所得消費曲線が右上に推移するということは、所得が増加したときX財Y財が共に増加していることを表すからです。

B点より僅かに右にずらした点の座標を考えると、明らかにB点のX座標Y座標より数値が高いので、X財Y財が増加しているというのが読み取れると思います。

 

一方、C点の付近についてはどうでしょうか。C点の前後で曲線は右下に進むように描かれています。このことから、C点においてX財は上級財、Y財は下級財であることが分かります。何故なら、所得消費曲線が右下に推移するということは、所得が増加したときにX財は増加し、Y財は減少していることを表すからです。

 

これも同様にC点より僅かに右にずらした点の座標を考えます。C点より右にずらした点の座標は、X座標においてはC点よりも大きいですが、Y座標においてはC点より小さいことが明らかですよね。このことから、X財は所得の増加に伴い増加しているので上級財、Y財は所得の増加に伴い減少しているので下級財ということになります。

 

所得消費曲線上において奢侈品(贅沢品)・必需品を判別する場合

 

所得消費曲線が図の曲線を描き、その曲線上の任意の点をA,Bとおきます。このとき、A点B点において、それぞれの財は上級財です。何故なら、それぞれの点において右に少し動かせばX財Y財の数量は共に増加するからです

 

A点においてX財Y財それぞれ上級財であることはわかりました。さて、それではA点においてX財Y財はどちらが奢侈品でどちらが必需品になるのでしょうか。それは、今までと同様に所得消費曲線上の点を右にずらせば一目瞭然であり、X財が奢侈品、Y財が必需品となります。

 

例えば、A点からB点への移動を見てみましょう。まず、A点よりもB点の方が右上にあるので、X財Y財何れも数量が増えているのが分かります。次に、その数量の増加幅について確認します。A→Bの過程で、X財の数量は大幅に増えているのに対して、Y財は僅かしか増えていません。このことから、X財は所得の増加に対して需要量が増えやすい一方で、Y財は所得の増加の影響をほとんど受けていないことがわかります。

したがって、X財は奢侈品であり、Y財は必需品であるということが導かれます。

 

エンゲル曲線

エンゲル曲線とは、所得消費曲線と同様に、ある消費者の所得が変化したときの最適消費点の変化の軌跡を表したものです。ただし、横軸には所得、縦軸に消費量を取ります。(所得消費曲線は縦軸横軸何れも財の消費量)

所得消費曲線と比べると、分析となる財の対象が一つになるという点で、比較的簡単に判別が出来ると思います。

 

 エンゲル曲線上において、上級財・下級財を判別する場合

図の曲線をエンゲル曲線、エンゲル曲線上の任意の点をA,Bとします。まずは点Aから見ていきます。点Aにおいて、僅かに右にずらすと、すなわち、所得を少し増やすと、それに伴って点Aの位置はやや上に移動します。つまり、所得の増加に伴い数量が増大しているので、点Aにおいて財Xは上級財であることがわかります。

一方、点Bにおいては、所得が増加するにつれ、Xの数量は減少しています。つまり、点Bにおいて下級財であることはもうお分かりですよね。

 

エンゲル曲線上において、奢侈品・必需品を判別する場合

図の曲線をエンゲル曲線、曲線上の任意の点をA,Bとします。点Aにおいて、この財は必需品と判断することが出来ます。何故なら、A点より右に少し移動させたとき、すなわち、所得を増加させたとき、ほとんど需要量が伸びないからです。一方で、点Bにおいては奢侈品であるということが分かります。何故なら、所得をわずかに増加させたとき、格段に需要量が増大するからです。

 

 

エンゲル曲線は軸の設定の方法がやや特殊ですので、このように軸の設定をすることに慣れていなければ、少し難しく感じるかもしれません。繰り返し読んで慣れて頂ければ幸いです。

 

 

復習はこちら⇒理解度チェック

 

また、エンゲル係数については、『エンゲル係数』(別窓)を参照下さい。

 

 

タイトルとURLをコピーしました