生産者余剰~グラフ、計算方法など~




 

今回は生産者余剰について説明します。

消費者余剰の内容を踏まえた上の説明となっていますので、消費者余剰について不安がある方は『消費者余剰』をご覧ください。

 

 

 

目次

生産者余剰

生産者余剰とは、ある財に関して、生産者が売っても良いと考える金額からその財の価格を差し引いた金額を表します。ここで、生産者が売っても良いと考える金額とは、企業が利益を得ることができる金額のことです。

 

その金額はもちろん、製作にかかった費用よりも大きな金額です。ここでいう費用というものには、財の原材料だけではなく、労務費というのも含まれています。

 

例えば、ある生産者がりんごに対して500円の費用を掛けて生産したとします。

 

この500円というのはとりあえず、りんごを作るための土地や原料、人件費などを全て足し合わせて、りんごの個数で割ったものだと考えて下さい。生産者はりんごを生産するのに合計で500円費やしたわけですから、当然これより低い価格で売ろうとは思いません。

 

なぜなら、これより低い価格で売ってしまうと、損をしてしまうからです。自分の使ったお金よりも入って来るお金が少なくなるような価格で商品を売ることは、特殊な場合を除いて非合理的です。

 

 

さて、このように考えた生産者はりんごを600円で販売するとします。このとき、消費者が600円でりんごを購入したとすると、得られる生産者余剰は600-500=100(円)となります。生産者は合計で500円しかコストを掛けていなかった財を600円で売ることが出来たわけですから、この生産者は100円の利益を得るはずです。

 

このように、生産者の得られる金額から生産者の掛けたコストを差し引いたものが生産者余剰というわけです。

まあ、消費者余剰とだいたい似たような概念ですね。ですが、生産者余剰の方が具体性がある分、想像しやすいと思います。

 

生産者余剰の計算方法

例えば、L,M,N,O,Pの5人がそれぞれりんごを1つ生産しているとします。さらに、Lさんは400円のコストでりんごを生産でき、Mさんは500円で、Nさんは600円、Oさんは700円、Pさんは800円でそれぞれ生産出来るとします。

 

そして、りんごの価格が650円に定まった場合を考えてみます。りんごの価格が650円の時、Lさん、Mさん、Nさんはりんごを販売しますが、OさんとPさんはりんごを売りません。

何故なら、650円で販売してしまうと、掛かった費用以下の価格で売ることになるので、販売することによって損失が発生することになるからです。

 

 

このとき、Lさんの生産者余剰は650-400=250、Mさんの生産者余剰は550-400=150、Nさんの消費者余剰は650-600=50となります。

さて、Oさんの生産者余剰はどうなるのでしょうか。当然、Oさんは650円でりんごを販売してしまうと損失が生じてしまうので、りんごを販売しません。したがって、Oさんの生産者余剰はゼロになります。

 

Oさんの生産者余剰は650-700=-50になるのではないかと思った人もいるかもしれませんが、生産者余剰は負の値を取らないため、このような結果になりません。損をするのを分かっていていれば、生産者はりんごを販売しないので、余剰自体発生しないということになります。

Pさんも同様の理由で生産者余剰はゼロとなります。

 

 

以上のことから、市場全体の生産者余剰は250+150+50=450であるという結果が導けます。

また、この場合の供給曲線は以下のようになります。

 

生産者余剰は販売価格と供給曲線が囲む領域の面積で求まります。

すなわち、生産者余剰は図の網掛け部分で示されます。網掛け部分の面積は、3つの長方形の面積と考えることができるので、1×250+(2-1)×150+(3-2)×50=450となり、上記で求めた生産者余剰と同じ結果になります。

 

 

 

 

生産者余剰の求め方

今まで見てきたように、生産者余剰は供給曲線と販売価格の囲む領域の面積で表せることが分かります。これを、一般的な供給曲線で表現すると以下のようになります。

 

 

価格がPで定まったとすると、求める生産者余剰は図の網掛け部分の面積ということになります。生産者余剰は、価格の平行線と供給曲線に囲まれる部分の面積で求めることが出来るからです。

 

しかし、仮に価格が供給曲線よりも下に位置するところで定まってしまった場合、生産者余剰はゼロになります。

その理由はもちろん、価格の平行線と供給曲線が交わらず、囲まれる領域が存在しないからです。

 

 

次に、価格が上昇したときの生産者余剰を考えます。

 

 

このとき、生産者余剰は緑の網掛け部分、青の網掛け部分、青色の三角形の合計に増大します。生産物の価格が上昇するということは、生産者が財に掛けるコストを一定とすると、利幅が大きくなるので、得られる収入が大きくなります。

このことから、価格が上昇した場合はそれに応じて生産者余剰も増大します。

 

青色の網掛け部分は、既存の生産者の生産者余剰の増加分を表しています。すなわち、これは価格がP以下で供給出来ている生産者たちの余剰の増加分です。

 

一方、青色の三角形は新たに販売を行った生産者の生産者余剰の増加分を意味しています。価格がP’になることで、PとP’の間の費用で財を生産している生産者が余剰を得られるようになるということです。

 

価格の上昇は、既存の生産者の生産者余剰を向上させるだけでなく、新たに財を生産する生産者を呼び起こし、社会全体の生産者余剰を高めるのです。

 

 


(練習問題)

供給曲線がP=Q+20で表せ、当初の販売価格が40であったとする。価格が40から60へ上昇した場合の生産者余剰の変化分を求めよ。

 

 

 

 

 

 

(解答)

 

価格が40の場合の生産者余剰は、P=40とP=Q+20の囲む領域の面積で表されます。さらに、P=40のとき、Q=40-20=20となることから、当初の生産者余剰は、1/2×20×20=200

 

価格が60の場合の生産者余剰は、P=60とP=Q+20の囲む領域の面積で表され、P=60のとき、Q=60-20=40となることから、価格上昇後の生産者余剰は、1/2×40×40=800

 

そして、生産者余剰の変化分は最初の生産者余剰から価格上昇後の生産者余剰の差分を求めればよいので、求める生産者余剰は800-200=600

 

 

 

他の例題はこちら⇒余剰分析の演習問題②

 

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