ハロッド・ドーマーの成長理論(ハロッド・ドーマーモデル)

ハロッド・ドーマーの成長理論(ハロッド・ドーマーモデル)

ハロッド・ドーマーの成長理論とは、投資がもたらす需要面及び供給面の経済効果を考慮したマクロ経済学の成長理論の1つです。

ある企業が生産活動を拡大し、より多くの財を生産しようと考えているとします。このとき、企業は生産をするために必要である機械を購入しようとするので、機械に対する需要は高まります。

すなわち、財市場における需要が増大します。新たに生産をするために機械を購入するという行為は、投資に当たることから、投資によって財市場の需要が拡大したと言えます。

また一方で、企業が新たに購入した機械を稼働し、財を生産して供給を行った場合、財の供給量は大きくなります。ここで、企業が新たに購入した機械を稼働させることは、投資であると考えることが出来ます。そして、この投資によって財市場を供給面から拡大させていることが分かります。

以上のことを踏まえたのがハロッド・ドーマーの成長理論です。

ハロッド・ドーマーの成長理論では、資本に関する成長率を保証成長率Gw(the warranted rate of growth)、労働の成長率を自然成長率Gn(the natural rate of growth) 、生産物の成長率を現実の成長率G(the rate of growth)とそれぞれ定義し、それらの関係性を説明しています。

保証成長率Gw(the warranted rate of growth)

保証成長率というのは様々な視点から定義がなされています。理論に最も則っている表現をするなら、投資による需要拡大効果ならびに供給拡大効果の一致を保証する成長率、と言えます。

そのほかには、資本が完全に利用されている場合の成長率、財市場における需給均衡が維持されるための成長率、などと表現されます。

投資による需要拡大効果と供給拡大効果の一致というのは、投資により新たに生産した財がすべて需要されることを表します。

つまり、投資によって増産した財が売れ残ることなくすべて購入されるということになるので、企業にとって最も理想的な状態です。

保証成長率は政府が存在するときとしないときによって公式が分けられます。

1.政府が存在しないとき

保証成長率Gw=s/v (s:限界貯蓄性向、v:資本係数)

政府が存在しないとき、財の需給均衡式はY=C+I(T=G=0)となります。

この式に消費関数C=cY(c:限界消費性向)を代入します。

Y=cY+I ⇔ Y-cY=I ⇔ (1-c)Y=I  ⇔ sY=I (1-c=s)

∴Y=1/s×I・・・(1)

ここで、資本係数v=K/Yと置きます。この資本係数vは、資本Kが生産量Yに対してどの程度貢献しているかを表しています。

さらに、v=K/Y ⇔ K=vY

とすると、vが一定のとき、ΔK=v×ΔYと表せます。

ΔKというのは資本の変化分、すなわち、投資を表すのでΔK=Iとなります。

これより、I=v×ΔY・・・(2)

(1)に(2)を代入すると、

Y=1/s×v×ΔY ⇔ ΔY/Y=s/v

すなわち、保証成長率Gw=ΔY/Y=s/v

となります。

限界貯蓄成功を資本係数で割ることで求められた割合で国民所得が増加すれば、財市場の需給均衡の均衡が保証されることから、このときの国民所得の成長率を保証成長率と呼んでいます。

2.政府が存在するとき

保証成長率Gw=s(1-t)/v (s:限界貯蓄性向、v:資本係数、t:税率)

財市場の需給均衡よりY=C+I+G、C=c(Y-T)、T=tY

政府は均衡予算で財政政策を行うものとします。(ハロッド・ドーマーのモデルの問題では、均衡予算以外を扱うことはまずありません。)

このことから、T=G

以上の式を整理すると、

Y=c(Y-tY)+I+tY ⇔ Y={1/(1-c)(1-t)}×I

後は1.と同じやり方で解いていけば、ΔY/Y=s(1-t)/vが導出されます。

自然成長率Gn(the natural rate of growth)

自然成長率とは、文字通り自然に経済が成長するときの程度を示す指数で、労働人口の成長率と技術進歩率を足し合わせることで求められます。人々が自然に経済活動を行えば、人口が増えて技術が発展することは歴史からも見て取れますよね。

例えば、500年前は人々は馬や牛などの動物に乗って時間をかけて移動をしていましたが、今や飛行機や自動車など優れた開発品に乗って短時間で様々なところに行けるようになりました。

そのほかにも、医療技術の発展により、昔に比べれば病気や怪我に対する耐性を強くすることができるようになりました。

また、人口に関して言えば、世界全体で見ると年々増加しています。日本やその他先進国については、労働環境や家計の面など社会的な問題が複雑に絡み合っているがために人口は減少傾向にあります。

日本にいると直感的には世界全体の人口は減少に向かっていると思うかもしれませんが、実際には長年増え続けています。

こういった技術の発展や人口の増加というものは、異質性を持つ強力なリーダーが先導しているからもたらされているというわけではありません。

それぞれの個人が、自分や他人にとってより快適な財・サービスを追及し、あるいは複数の子供を欲して生きているからこそ、自然に技術が進展し、人口が増大しているのです。

(あくまでこれは私なりの自然成長率の解釈であるため、他の本にはこのように書かれていないと思います、笑)

このことから、自然成長率は労働人口の成長率と技術進歩率で構成されています。また、自然成長率は人口の増加率がそのまま経済の成長率につなげられていることから、労働者が完全に雇用されている状態の経済の成長率を示します。

保証成長率Gwと自然成長率Gnと現実の成長率G

保証成長率Gwと自然成長率Gnの定義は以上の通りです。それでは、現実の成長率Gはどのような値を取れば良いのでしょうか。

それはもちろん、財市場の需給均衡を実現する成長率と一致し(すなわち、G=Gw)、かつ完全雇用を実現する成長率と一致(すなわち、G=Gn)するとき、現実の成長率Gは望ましい値を取ります。

すなわち、

G=Gw=Gn

となれば良いのです。また、政府の存在と技術の進歩を無視すると、

Gw=Gn ⇔ s/v=n

となり、これが一般的な均衡成長(財市場と労働市場の需給均衡を満たす成長)の条件になります。

ただし、ハロッド・ドーマーの理論において、貯蓄率、資本係数、労働人口の成長率はそれぞれ硬直的であり、全く別の要因で定まるとされていることから、s/v=nとなるのは、まずあり得ないとされています。

不安定性原理(ナイフエッジ原理)

現実の成長率Gが保証成長率Gwといったん乖離した場合、その乖離幅はさらに大きくなってしまいます。この経済成長の不安定性を、不安定性原理(ナイフエッジ原理)と呼びます。

1.現実の成長率Gが保証成長率Gwより高いとき

保証成長率Gwというのは、資本が完全に利用されている時の経済の成長率を表します。このときの成長率を、現実の成長率が上回るということは、資本が足りていないことを意味します。

そこで企業は、投資を行って資本を増大させ、資本の利用を増やします。企業が投資を行えば、市場の規模が大きくなり、さらに経済は成長します。

つまり、現実の成長率Gが保証成長率Gwを上回れば、現実の成長率はさらに伸びるようになり、GとGwの差が大きくなっていくということになります。

2.現実の成長率Gが保証成長率Gwより低いとき

保証成長率より現実の成長率が低いとき、資本が完全に利用されている状態にありません。つまり、資本が過剰になってしまっていて、企業が資本を最大限に利用していないということです。

企業が資本を活用していないのは、供給する財に対する需要が見合っていないからにほかなりません。企業は需要が小さいとき、資本の削減に努め、投資を縮小するように動きます。

つまり、現実の成長率Gが保証成長率Gwを下回ってしまうと、現実の成長率はさらに下がってしまい、GとGwの差は大きくなってしまいます。

ハロッド・ドーマーのモデルを用いた問題


政府部門が存在するハロッド・ドーマーの経済成長モデルが、

Y=v/K

Y=C+I+G

C=c(Y-T)

G=T=tY

ΔK=I

(Y:国民所得、K:資本量、v:資本係数、C:消費、I:投資、G:政府支出、c:平均消費性向、T:税収、t:税率)

で表されるとする。

v=6.0、c=0.8、t=0.1であるとすると、保証成長率はいくらになるか。

【解答】

消費性向がc=0.8であることから、貯蓄性向はs=1-0.8=0.2

ここで、Gw={s×(1-t)}/vの公式を使うと、

Gw=0.2(1-0.1)/6=0.18/6=0.03

これより、保証成長率Gwは3%になります。

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