余剰分析では、消費者余剰、生産者余剰、社会的余剰をそれぞれ求め、どのような値を取るか、市場の変化や政策の変化によってどのように変化するかを分析します。
ここでは、消費者余剰に関する内容を解説します。
目次
消費者余剰
消費者余剰とは、ある財に関して、消費者が支払っても良いと考える金額(支払許容額)からその財の価格を差し引いた金額を表します。
すなわち、消費者余剰というのは、消費者が払っても良いと感じる金額からその商品の価格を差し引いたものであるということから、言わば消費者が得をしたと感じられる程度を示していると捉えることが出来ます。
例えば、ある消費者がりんごに対して500円の価値があると考え、500円までなら支払っても良いと思っているとします。
この場合にりんごが100円で売られており、その消費者が100円で購入したとすると、得られる消費者余剰は500-100=400(円)ということになります。
500円支払っても良いと思っていたりんごを、100円で買えたわけですから、この消費者は400円得をしたと思うはずですよね。
このように、消費者のお得感を数値化したのが消費者余剰というわけです。
そして、一般的に消費者余剰は個々の消費者が得る余剰ではなく、消費者全員が得る余剰を指します。つまり、消費者余剰を求めよ、という指示の問題では、消費者全体の消費者余剰を求めろということを言っているのです。問題に慣れたらごく当然のことだと感じるかもしれませんが。笑
それでは、消費者余剰の具体的な例を見ていきます。
消費者余剰の計算方法
例えば、A,B,C,D,Eの5人の消費者がそれぞれ100円のりんごを1つ買おうとしているとします。また、Aさんの支払許容額が200円、Bさんの支払許容額が150円、Cさんの支払許容額が130円、Dさんの支払許容額が100円、Eさんの支払許容額が80円とします。
このとき、Aさんの消費者余剰は200-100=100、Bさんの消費者余剰は150-100=50、Cさんの消費者余剰は130-100=30、Dさんの消費者余剰は100-100=0となります。
さて、Eさんの消費者余剰はどうなるのでしょうか。Eさんの支払許容額は80円であるということから、りんごに対して80円の価値しかないと思っています。しかしその一方で、りんごは100円で売られています。この時、Eさんはりんごを需要しません。何故なら、りんごには100円の価値が無いと考えているからです。
Eさんの消費者余剰を80-100=-20と考えた人もいるかもしれませんが、消費者余剰はマイナスの値を取らないため、こうなることはありえません。また、そもそも消費者がその財を購入するという行動を取らないため、余剰は発生し得ないということになります。
以上のことから、市場全体の消費者余剰は100+50+30+0=180であるということが分かります。
また、この場合の需要曲線は以下のようになります。
消費者余剰は販売価格と需要曲線が囲む領域の面積で表現されます。すなわち、消費者余剰は図の斜線部分で示されています。斜線部分の面積は、1×100+(2-1)×50+(3-2)×30=180となり、上記で求めた消費者余剰と同じ結果が得られます。
消費者余剰の求め方
上のセクションで見たように、消費者余剰は需要曲線と販売価格の囲む領域の面積で表せることから、一般的な需要曲線で見ると以下のように示すことができます。(参照;需要曲線(マーシャルの需要曲線)と補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)
つまり、消費者余剰を求めよと言われれば、需要曲線を描き、需要曲線とその財の価格の平行線で囲まれる領域の面積を出せば良いということになります。
次に、価格が下落したときの消費者余剰を見てみましょう。
価格がPのとき、消費者余剰は明らかに図の三角形の上部分です。なぜなら、消費者余剰は需要曲線Dと価格Pで囲まれる領域の面積で表されるからです。
さらにこの時、価格がPからP’に下落したとします。すると、消費者余剰は需要曲線Dと価格P’で囲まれる部分であり、増大していることが分かります。
また、DとPとP’に囲まれる領域かつ数量がQまでの領域は、既存の消費者の消費者余剰の増加を表しています。つまり、価格が下落する前に財を購入していた消費者の消費者余剰が高まるのです。さらに、図の赤の斜線部分は新たな消費者の消費者余剰を表しています。
これは、価格が下がることで購買行動に移ってお得感を得られた消費者が増加したことを意味します。
価格の下落は既存の消費者の消費者余剰を高めるだけでなく、新たに商品を購買する消費者を増やして消費者余剰を増幅させるのです。
すなわち、消費者にとっては、やはり財は安ければ安い方がより高い満足を得られるという結果が導かれています。そして、グラフからお分かりのとおり、価格が0円のときに消費者余剰は最大になります。
それでは、経済学的にみると財の価格が0円になるときが最も望ましいのでしょうか。しかし、そう簡単にはいきません。この詳細はまた後日に書いていこうと思います。お疲れ様でした。
消費者余剰の例題です。