エンゲルの法則とペティクラークの法則

農業の問題を扱うとき、しばしばキーワードとして出てくるのがエンゲルの法則ペティクラークの法則です。どちらも農業の持つ性質に着目して生まれた法則です。

あまり見かける機会がないのでとっつきにくいと思う人もいるかもしれませんが、その原理は極めて単純です。他の農業についての記事を読んで頂くとより理解が深まるのではないかと思います。

農工間不均等発展』(別窓)、『日本の農業政策』(別窓)は農業についてまとめています。

エンゲルの法則

エンゲルの法則とは、所得が増加するにつれ、支出に占める食料費の割合が減少するという現象のことです。

これは先進国と発展途上国の人々のお金の使い方を見ればすぐに腑に落ちるのではないでしょうか。すなわち、先進国では食費の他に、趣味や資産、教育にお金を使っている一方で、貧しい発展途上国では、食糧を確保するのが精一杯でそれ以外にお金を使う余裕がありません。

つまり、経済が発展して豊かになると、食費以外にもお金を使う余裕ができ、食料支出の割合が減少していくのです。

上部では先進国と発展途上国を例に挙げて説明しましたが、よりミクロな視点で、すなわち個人について見た方が解りやすいかもしれません。つまり、所得がある個人とない個人を想定します。

例えば、日本の大学生と医者の個人の家計について考えます。

一般的に、日本の大学生は一部の例外を除いて金銭的に余裕がないので、ひと月あたりの所得を10万円としましょう。一方、医者は一般的に高給取りであるので、ひと月あたりの所得を100万円とします。それぞれだいたい3000円程度食費に費やすとすると、ひと月あたり9万円の出費をすることになります。

この例だと学生は所得のおよそ9割を食費に費やしていることになります。それに対して医者はひと月あたりの食費の金額が所得の1割にも満たないのです。仮に医者が高い所得があるから食費にもっと費用を費やすとして月に50万を食事に使うとしても、およそ所得の半分程度にしか及びません。

つまるところ、所得が多ければ食費の割合は必然的に小さくなる、ということです。

あまりに当然な話ではありますが、この消費構造を拡大して法則化したのがまさにエンゲルの法則なのです。

それゆえ、経済が発展するにつれ、食糧に対する需要が相対的に低くなるので農業の成長率が下がり、農工間不均等発展が生じます。そして、この法則は下記のペティ=クラークの法則にも繋がります。

ペティ=クラークの法則

ペティ クラークの法則とは、ある一国の経済が発展すると、それに伴い国民経済の中心の産業が第一次産業から第二次産業、第二次産業から第三次産業へと変遷することです。

また、この現象を産業構造の高度化とも呼びます。

(第一次産業→農林水産業など、第二次産業→鉱業、製造業、建設業など、第三次産業→金融・保険業、情報通信業、小売業、サービス業など)

事実として、日本を含む多くの先進国では第三次産業が最も大きいGDPの割合を占め、次いで第二次産業、その次に第一次産業という構造になっています。従業員数についていうと、日本の全産業の過半数以上が第三次産業に従事しています。

それでは、なぜこのような現象が発生するのでしょうか。

まず、第一次産業から第二次産業へ産業の中心が移ることについては、エンゲルの法則より明らかでしょう。つまり、経済が発展すると農産物といった食糧よりもモノが需要されるようになるからです。これは、所得に占める食料支出の割合が下がるということから自明ですよね。

ここで、より理解を深めるために、このペティクラークの法則の第一段階を需要側と供給側から見て考察します。

需要側の説明は繰り返しになりますが、農産物は需要の所得弾力性(所得が1%変化したときに需要が何%変化するかを示したもの)が1より小さいので、経済が成長して人々がより多くの所得を得るようになると、所得に占める食料支出の割合は徐々に縮まっていきます。

このことから、需要側から見ると、農業の成長は経済の成長に伴い逓減していくこことなります。

供給側から見ると、農業は非農業部門と比べて様々な制約が存在するというのがポイントです。

まず、分業が困難であることです。農作物というのは、季節を通じて長期的に育成を行わなければ収穫することができません。そのため、ある一時点において作業を分別してそれぞれの労働者が生産活動を行うということが出来ないのです。例えば、春に種蒔きや草刈、収穫をまとめて行おうとしてもそれは不可能ですよね。

次に、天候に大きく左右されてしまうことです。農作物は気象条件によってその収穫量や品質、大きさなどが大きく異なります。それ故、天候の変動の影響を受けやすいため、収入に波が出来てしまいます。

また、農産物は腐敗しやすいので、生産した農産物は時期に繰り越すことが困難であり、当期で全て出荷しなければなりません。それ故、農産物は価格の変動に合わせて数量を調整することが出来ないので、供給の価格弾力性は小さくなってしまいます。

供給の価格弾力性が小さいと、生産性を上げたとしても収益をあげにくいので、生産者側にと

って非常に不都合です。

このように、需要から見ても供給から見ても農業は非農業部門より不利な状態にあるため、相対的に成長速度は遅くなり、第一次産業から第二次産業へと産業の中心は推移するのです。

さらに第二次産業が活発になってモノがあふれると、人々はモノよりもサービスを需要するようになるため、第三次産業へと産業の比重が移ります。例えば、家に一通り必要な家具が揃うと、さらに物を買うよりも娯楽にお金を使いたくなりますよね。

この消費構造の変化以外にも産業構造の変化の要因はあります。それは、第三次産業の性質です。

第三次産業は、第二次産品と違って技術革新により生産性が向上しにくい性質を持ちます。第二次産品は生産性向上により価格が下がりやすい一方で、第三次産業は価格が下がりにくいので、相対的に第三次産業の総額が上昇していき、第三次産業のウエイトが大きくなります。

このようにして、産業の中心は第二次産業から第三次産業への推移するのです。

以上の一連の流れがペティクラークの法則です。

また、エンゲル係数については、『エンゲル係数』(別窓)を参照下さい。

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