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財の弾力性~需要の価格弾力性、その他の弾力性~

 

今回は経済学において最も重要な概念の一つである弾力性について説明します。大学の授業や編入試験、資格試験で頻出のテーマです。また、出題方法も多岐に渡りますので、馴染みの無い方はより早く慣れていくことが好ましいでしょう。

 

ここで様々な種類の弾力性に慣れておけば、初見の問題に対しても落ち着いて対処ができるはずです。 最初に弾力性のポイントから紹介しておきます。

この2点を抑えておけばより簡単に弾力性について理解できるのではないかと思います。

 

また、練習問題もこの文章の最後にいくつか掲載していますので、この記事を読み終わった後に挑戦してみたください。

 

目次

需要の価格弾力性

需要の価格弾力性とは、価格の変化が需要にどのような影響を及ぼすのかを表す数値で、その数値が大きくなればなるほど、価格の変化によって需要が大きく変動することになります。

 

具体的には、価格が1%変化したときに需要が何%変化するかを表しています。需要の価格弾力性は、需要の変化率を価格の変化率で割ると求めることができます。 変化率というのは、当初の数値から変化後の数値が何%増減したかというのを表します。

 

価格の変化率は、価格の変化分を元の価格で割ることによって求められます。つまり、ΔP/Pと表せます。

需要の変化率は、需要の変化分を元の価格で割ることによって求められます。つまり、ΔX/Xと表せます。

( Δがイマイチわからない人のために: Δ(でるた)とは、変化分を表す記号です。例えば、Pが当初100であったが、105になったとしましょう。このとき、Pの変化分は100→105より5だけ増加したことになりますよね。この増加分を記号で表すと、ΔP=5と表せます。)

 

以上を踏まえて、需要の価格弾力性を求めます。 需要の価格弾力性は、需要の変化率を価格の変化率で割ればその数値が明らかになります。 すなわち、需要の価格弾力性=(需要の変化率)÷(価格の変化率)=(ΔX/X)÷(ΔP/P)=(ΔX/ΔP)×(P/X) となります。

 

ただし、一般的に需要と価格には負の関係があるので(ex.価格が上がると需要が下がる)、あらかじめマイナスの符号をつけることで算出される数値を正にするように定義式が設定されています。つまり、 需要の価格弾力性=-(ΔX/ΔP)×(P/X) となります。

 

また、Δを微小変化分として扱うことも可能であり、以下のように置き換えられることもあります。

需要の価格弾力性=-(dX/dP)×(P/X)  

一般的に、Δを用いて弾力性を求める場合は特定の数値の変化が与えられており、微分を使う場合はある時点での価格と数量、需要曲線が与えられています。

 

 

この定義式はやや覚えにくいのでうろ覚えになってしまってミスをしてしまう、ということが多いです。定義式を覚えるのではなく、どういう過程で導出されているのかを確実に押さえて下さい。『需要』の価格弾力性ですから、あくまで主体は需要です。

需要の価格弾力性は価格という変数の変化にどれだけ需要が反応するかを表すので、需要を割ると覚えておけば良いかと思います。

 

また、需要の価格弾力性が1より大きいとき、価格の変化に需要が敏感であると判断でき、このような財を奢侈品と呼びます。

一方、需要の価格弾力性が1より小さいとき、すなわち、価格が変化してもあまり需要量が変わらないとき、このような財を必需品と呼びます。 関連記事;『所得効果と代替効果①~上級財(正常財)、下級財(劣等財)、ギッフェン財の分析

 

なぜ需要の価格弾力性は1を境に捉え方に違いがあるのでしょうか。それは、導出の方法にポイントがあります。上述の通り、需要の価格弾力性は需要の変化率を価格の変化率で割ることで求められています。

 

つまり、価格が1%変化したとき需要がどの程度変化するかを表します。

その程度に当たる数値がまさに弾力性なのです。例えば、需要の価格弾力性が2の場合、価格が1%変化すると需要は2%も変化することを表しています。

 

反対に、需要の価格弾力性が1/2の場合、価格が1%変化すると需要は1/2%しか変化しないことを表しています。

このことから、需要の価格弾力性は1を基準として、奢侈品や必需品の判断に使われます。

 

需要の価格弾力性に関するグラフ

需要の価格弾力性の問題には、需要曲線の図が与えられ、図示されている図の線分などから需要の価格弾力性を求めなければならないものがあります。これはちょっとややこしいので、そのまま暗記した方がいいかもしれません。

下記の図において、点Eにおける需要の価格弾力性は、e=YO/XYまたはe=AZ/OZで表されます。

 

 

そのような値を取る理由は、e=-(Δq/Δp)×(p/q)の式から導くことが出来ます。

まず、価格pは図において、OYであることが分かります。同様に、需要量qはOZとなります。

 

ここまでは良いと思いますが、問題となるのが(Δq/Δp)です。これが少しややこしいんですが、(Δq/Δp)というのは、需要曲線の傾き(Δp/Δq)の逆数です。需要曲線の傾きは図の記号を用いると、(-XY/YE)または(-EZ/ZA)で表すことが出来ます。これらの逆数は、(-YE/XY)または(-ZA/EZ)です。

 

以上のことから、e=-(-YE/XY)×(OY/OZ)または-(-ZA/EZ)×(OY/OZ)

さらに、YE=OZ,EZ=OYであることから、

e=YO/XYまたはe=AZ/OZとなります。

 

 

続いて、需要曲線が反比例のグラフとなるときを考えます。この場合、グラフは以下のようになります。

図にも記載している通り、需要曲線が反比例のグラフとなるときは、曲線上のいかなる点においても、需要の価格弾力性は1となります。

需要曲線がp=a/q(a:定数、p:価格,q:需要量)で表されるとします。

 

このとき、pをqで微分すると、dp/dq=-a/q^2

また、p=a/q⇔pq=aと表せることから、

e=-(Δq/Δp)×(p/q)=-(-q^2/a)×p/q=pq/a=a/a=1

となります。

 

需要の所得弾力性

需要の所得弾力性とは、所得が1%変化したときに需要が何%変化するかを示す指標です。この数値は、需要の変化率を所得の変化率で割ると求めることができます。

こちらの場合は、需要と所得に正の関係があるので(所得が増えると需要も増える)、定義式にはマイナスの符号をつけません。 また、同様にポイントを当てはめて定義式を確認してみましょう。

 

○○にあたるのが需要、××にあたるのが所得です。このことから、需要の変化率が分子であり、所得の変化率が分母であると判断できます。つまり、需要の所得弾力性=需要の変化率÷所得の変化率で求められます。

 

需要の変化率をΔP/P、所得の変化率をΔM/Mとすると、需要の所得弾力性は、 需要の所得弾力性=需要の変化率÷所得の変化率=(ΔP/P)/(ΔM/M)=(ΔP/ΔM)×(M/P)となります。 繰り返しになりますが、一般的に所得と需要には正の相関関係があるので、マイナスの符号はつけません。  

 

供給の価格弾力性

供給の価格弾力性とは、価格が1%変化したときの供給量がどれほど変化するかを示す指標です。 ポイントに当てはめて考えると、○○に該当するのが供給、××に該当するのが価格ですので、供給の変化率が分子、価格の変化率が分母ということになります。

 

つまり、供給の価格弾力性=供給の変化率÷価格の変化率です。 供給の変化率をΔS/S、価格の変化率をΔP/Pとすると、 供給の価格弾力性=供給の変化率÷価格の変化率=(ΔS/S)/(ΔP/P)=(ΔS/ΔP)×(P/S) と表されます。

供給の場合、一般的に価格が上昇するほど供給も増大します。このことから、供給と価格には正の関係があるので、需要の価格弾力性の場合とは違ってマイナスの符号はつけません。

 

 

労働の賃金弾力性

労働の賃金弾力性は賃金が1%変化すると労働時間がどれほど変化するかを表しています。 最初のポイントに当てはめて考えると、○○が労働に当たり、××が賃金に当たります。労働というのは労働時間を指すので、分子を労働時間の変化率、分母を賃金の変化率とすることで、労働の賃金弾力性が求められます。

 

労働時間の変化率をΔL/L、賃金の変化率をΔw/wとすると、 労働の賃金弾力性=労働時間の変化率÷賃金の変化率=(ΔL/L)/(Δw/w)=(ΔL/w)×(w/L) と表されます。

 

投資の利子弾力性

投資の利子弾力性とは、利子率が1%変化したときの投資の変化率を表しています。 最初のポイントに当てはめて考えると、○○が投資に当たり、××が利子に当たります。つまり、投資の変化率を分子、利子の変化率を分母とすることで投資の利子弾力性を求めることができます。 また、利子が上がると投資は減少するので、マイナスをつけます。

 

投資の変化率をΔI/I、賃金の変化率をΔr/rとすると、 投資の利子弾力性=投資の変化率÷利子の変化率=-(ΔI/I)/(Δr/r)=-(ΔI/r)×(r/I) と表されます。

 

需要の交差弾力性(需要の交差価格弾力性)

需要の交差弾力性はある財の価格の変化がほかの財の需要量にどれほど影響を与えるかを示す指標です。

例えば、2つの財A,Bを考えます。このとき、Aの需要の交差弾力性は、Bの需要量の変化率をAの価格の変化率で割ることで求められます。 つまり、メインとなる財の価格の変化は、他の財の需要にどんな影響を及ぼすかというのを求めるときに使います。

 

分子にはBの需要量の変化率、分母にはAの価格の変化率が当てはまります。この交差弾力性というのは、価格と需要量どちらをメインの財の変化率にすれば良いかについて当惑することがあります。交差弾力性というのは、ある財の価格が他の財の需要にどんな影響をもたらすかを示す指標です。

したがって、分母になるのは他の財の需要量の変化率、分子になるのはその財の価格の変化率であると覚えておいてください。

 

需要の交差弾力性がゼロのとき、その2つの財は独立財と呼ばれます。独立財とは、互いに影響を全く及ぼさない財のことを言います。なぜ需要の交差弾力性がゼロだと独立財と呼ばれるかというと、ある財の価格の変化がもう一方の財の需要量を増減させておらず、無関係の財と判断することができるからです。

 

需要の交差弾力性がプラスのとき、その2つの財は代替財です。なぜなら、片方の価格が上がることでもう一方の需要量が増加するからです。 需要の交差弾力性がマイナスのとき、その2つの財は補完財です。なぜなら、片方の財の価格が上がることでもう一方の需要量が減少しているからです。   (関連記事;『代替財・補完財・独立財』)

 

今回の内容は数式を使うことや多くの問題をこなすことでしか醸成されません。 数式の問題や文章題の分量が適度に多い参考書を使うことで習得することが出来ると思います。

 

 

 

例題

ある財の価格が1000円から500円に下落したところ、需要量が400個から600個に増加した。この財の価格弾力性はいくらになるか。

 

 

 

 

 

解説

 

 

まずは価格の変化に着目します。価格Pが1000円から500円に下落していることから、ΔP=-500となります。

次に、需要の変化については、400個から600個へ増加しているので、ΔX=200となります。

 

当初の価格は1000円であり、需要量は400個です。

このことから需要の価格弾力性eを計算すると、

 

e=-(ΔX/ΔP)×(P/X)

=-(200/-500)×(1000/400)=1

となります。

 

需要の価格弾力性が1ということは、価格が1%変化したときに需要も1%変化することを表します。このことをこの例題の結果で確認してみます。

 

1000円から500円に価格が下落したということは、価格の変化率は

(1000-500)/1000=50%

 

数量が400個から600個に増加したということは、需要の変化率は

(600-400)/400=50%

と、このようにどちらも同じ比率で増減していることが分かります。

 

 

復習はこちら⇒理解度チェック、 弾力性の計算問題①、 弾力性の計算問題②、 弾力性の計算問題③、 弾力性の計算問題④、 弾力性の計算問題⑤、 弾力性の計算問題⑥、 弾力性の計算問題⑦

 

 

 

 

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