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需要曲線(マーシャルの需要曲線)と補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)

今回は需要曲線と補償需要曲線について論じます。

ただし、このテーマを理解するには上級財や下級財の概念を理解しておく必要があるので、知識が曖昧な人は『所得効果と代替効果①~上級財(正常財)、下級財(劣等財)、ギッフェン財の分析』(別窓)を参照してください。

 

目次

需要曲線(マーシャルの需要曲線)

価格と消費量の関係を代替効果と所得効果を足した全部効果で表した曲線が需要曲線(マーシャルの需要曲線)です。

一般的に需要曲線と呼ばれるものは、このマーシャルの需要曲線を曲線を指します。ギッフェン財を除いて、基本的に右下がりの曲線を描きます。

 

市場に出回る財の数量が増えるにつれ、価格が徐々に下がっていくことからこのような形状になることは容易に想像がつきますよね。

 

補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)

価格と消費量の関係を代替効果のみで表した曲線が補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)です。補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)は所得効果を無視しているため、分析対象となる財がどのような性質を持つ財であるかによってマーシャルの需要曲線と関係性が異なります。

 

所得効果の正負は上級財であるか下級財であるかに依存するからです。

そこで、上級財・下級財・ギッフェン財の需要曲線と補償需要曲線を見ていきましょう。

 

 

通常の需要曲線(マーシャルの需要曲線),補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)

 

1.上級財の場合

需要曲線(マーシャルの需要曲線)をDD、補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)をD’D’とします。上級財を対象としているとき、このように補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)の方が勾配が急になります。何故なら、上級財の所得効果は価格の変化と逆の方向の作用となるからです。

 

 

例えば、マーシャルの需要曲線の場合、価格が上昇したとき、負の代替効果と負の所得効果の影響を受けます。一方、ヒックス流の需要曲線の場合、価格が上昇したとき、負の代替効果の影響しか受けません。

 

 

このことから、マーシャルの需要曲線の方が価格の影響を強く受けていることが明らかですよね。つまり、マーシャルの需要曲線の方が弾力的であり、勾配が緩やかであると言えます。

 

2.下級財の場合

 

需要曲線(マーシャルの需要曲線)をDD、補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)をD’D’とします。下級財を対象としているとき、需要曲線(マーシャルの需要曲線)の方が勾配が急になります。何故なら、下級財の所得効果は価格の変化と同じ方向の力を持つからです。

 

例えば、マーシャルの需要曲線の場合、価格が上昇したとき、負の代替効果と正の所得効果の影響を受けます。一方、ヒックス流の需要曲線の場合、価格が上昇したとき、負の代替効果の影響しか受けません。

 

 

マーシャルの需要曲線の場合、所得効果により負の代替効果が緩和され、全部効果が小さくなっています。すなわち、代替効果のみであるヒックスの需要曲線の方が価格の影響を強く受けていることが分かります。つまり、ヒックスの需要曲線の方が弾力的であり、勾配が緩やかであると言えます。

 

 

3.ギッフェン財の場合

 

需要曲線(マーシャルの需要曲線)をDD、補償需要曲線(ヒックスの需要曲線)をD’D’とします。ギッフェン財を対象としているとき、マーシャルの需要曲線は右上がりの曲線に、ヒックスの需要曲線は右下がりの曲線になります。

 

なぜこのような形状を呈するのでしょうか。

 

まずは、ギッフェン財の性質から確認しましょう。ギッフェン財とは、所得効果が代替効果を上回る財でしたよね。ここで、今まで同様価格が上昇したときのことを考えます。価格が上昇すると、ギッフェン財の性質上消費量が増大します。

 

 

すなわち、正の所得効果が負の代替効果を上回ることから、マーシャルの需要曲線は右上がりの曲線になります。一方で、ヒックスの需要曲線はこの正の所得効果を無視したものですから、負の代替効果のみを反映します。

つまり、価格の上昇すると代替効果により消費量が減少することを示す曲線が導出されるわけです。

 

 

復習はこちら⇒理解度チェック

 

 

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