エンゲル係数とは~用語の意義、日本のエンゲル係数の推移~




 

経済の指標には様々なものがあります。しばしばニュースなどでも出てくる有名な指標の一つにエンゲル係数があります。日本においてこの係数の値が高まりつつありますが、エンゲル係数の上昇というのは経済にとってどのような意味を持つのでしょうか。分かりやすく説明します。

 

 

エンゲル係数とは

エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める食費の割合を指します。つまり、支出のうちどれほど食事にお金を使っているかを表します。このことから、エンゲル係数を求めるには、消費支出を食費で割れば良いということになります。等式にして表すと、

 

エンゲル係数=食費÷消費支出

 

であり、簡単に計算して求めることが出来ます。

 

 

 

例えば、毎月同じ給料をもらってその全額を全て使い果たし、その月における食費の額が変動するとすれば、それに合わせてエンゲル係数も変化します。

月給が25万でそのうち10万円を食費に使っていれば、10万円÷25万円=0.4となり、エンゲル係数は0.4となることが分かります。

 

エンゲル係数のイメージ図

エンゲル係数

 

とても簡素で幼稚な絵になってしまいましたが、エンゲル係数のイメージとしてはこんな感じです笑 収入が変わらない状態でカフェでコーヒーを飲むことが増えたり、外食することが増えれば徐々にその数値は高くなります。

 

先程の例に戻りますが、食費を切り詰めて月に5万円しか掛けないようにしたとしましょう。この時のエンゲル係数は5万円÷25万円=0.2(20%)となります。このように、食費を節約すればするほどエンゲル係数はより低い値を取ります。

 

しかし、食費は生活していくうえで必要不可欠な出費であり、所得が少ない人ほどその負担額が割高になり、エンゲル係数は高くなる傾向があります。

次はアルバイトで月に10万を稼いでいる一人暮らしの大学生を例に考えます。この大学生が月に5万円を食費に使うとすれば、エンゲル係数は5万円÷10万円=0.5(50%)となり、先程の例と比べて非常に高くなることが分かります。

 

また、食費の割合を月給25万の人と同水準(すなわち、20%)になるように下げたとすれば、その大学生は収入が10万円であり、エンゲル係数が20%であることから、

10万円×20%=2万円

となり、2万円しか食事にお金を使えなくなってしまいます。1ヶ月に2万円しか食費を使えないとすれば、平均で一日当たり666円の食費ということになります。しかし、現実的にはこの食費で1ヶ月生活するというのは困難であると想定されるので、この学生の場合エンゲル係数を20%に抑えるのは難しいでしょう。

 

つまり、所得水準の低い人たちほど、エンゲル係数は高くなり、一方で所得水準が高い人たちほどエンゲル係数は低くなります。そのため、一般的には大学生など収入が少ない人はエンゲル係数が高い傾向にあります。

 

ついでにこのことをデータで確認します。以下のグラフは2015年度における2人以上世帯の年収別のエンゲル係数を表しています。

 

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データ元:統計局ホームページ

 

図で見て分かる通り、明らかに年収が低いほどエンゲル係数が高くなっています。439万円~576万円、576万円~720万円はかなり拮抗していますが、439万円以下と比べるとその差は歴然です。また、2005年から2015年の10年間で年収別に見てみても、低い年収のグループが自らより高い年収のグループのエンゲル係数より低くなることはありませんでした。

 

 

 

日本のエンゲル係数の推移

それでは、エンゲル係数がどのように変化しているか、時系列で見てみましょう。2005年から2015年における日本の2人以上の世帯におけるエンゲル係数の推移は以下のようになっています。

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データ元:統計局ホームページ

 

2005年から2011年までは緩やかに上昇するトレンドがありますが、2013年から2014年、及び2014年から2015年にかけて格段に上昇しています。

さて、エンゲル係数が上昇する要因とは何が考えられるでしょうか。エンゲル係数は食費を消費支出で割ることで求められることから、食費の増大若しくは消費支出の減少です。

しかし、景気は徐々に回復しており、人々の所得は決して下がっているわけではないので、消費支出の減少とは考えにくいです。

 

一方で、これらの年においては日銀の異次元緩和により円安が進行しました。円安が進行した場合、海外からの輸入商品の価格が上昇します。日本は多くの農産物や食料を海外から輸入しているため、野菜や肉などの価格も上昇しました。

 

こうして我々消費者は以前より多くの食費を支払わなければならなくなったため、エンゲル係数はこれほど高くなったと推測されます。再度円高になって景気の変動が大きくなければ、元の水準に戻るのではないかと思います。

 

 

 

 

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